Thursday, February 11, 2010

「食事のマナー考」


東海林さだおさんの『偉いぞ!立ち食いそば』(文春文庫)に
収められている「食事のマナー考」に共感できる箇所がありましたので
ご紹介します。


この話は、東海林さんらしいユーモアあふれる文章で、
人間界における食事のマナーの話から始まり、
では動物の世界ではどうなのか、草食動物はいいとして
「問題は肉食動物である。彼らのマナーは最低である。
〜掟も法律も義理も人情もない〜」
と続いていくのですが、

私が共感したのは、
「キリンさんも象さんも河馬さんも、そういう弱肉強食にかかわることなくちゃんと
生きている。
 人間だってベジタリアンとして生きていく道がある。
 一匹の動物の一回の食事が、それより弱い動物の命によってまかなわれているという仕組みは、どう考えてもまちがっている。
 仕方のないことだ、それが自然の摂理というものなんだよ、そういうふうにして自然界は成りたっているんだよ、ということでは済まされない問題だと思う。
 仕方のないことだ、と言うなら、次に述べるようなことも仕方のないことで済まされることになる。」

もし恐竜の時代に人間が存在していたらどんな風に追いかけられ怖い思いをし、食べられていくのか、という描写があって、

「どうです、これでもあなたは、強いものが弱いものをゴハンとして食べる仕組みを仕方がないこととして認めますか。
 ね、この仕組みを変えましょうよ。
 いますぐに、ということではなく、これから先長い時間をかけ、たとえば百年とか二百年とかかかってもいい。
 その間にライオンさんたちにもそのことを話し、説得していけばわかってくれるのではないだろうか。
 〜中略〜
 肉食から草食へという道は、ライオンさんたちにとってつらくて長い道のりかもしれない。
 挫折しそうになることもあるかもしれない。
 そういうときは、象さんやキリンさんや河馬さんたちが励まし、草の食べ方、見分け方などを指導していってほしい。
 そうしていつの日か、ライオンさんに、
「うん、草もこれでなかなかおいしいものなんだね。」と言わせるようになっていってほしい。
 そのとき、大草原に本当の平和が訪れるのである。」

元々肉食の動物に草食になれ、と要求するのは無理にしろ、
このライオンの部分を、元々草食もしくは果食動物といわれているにも関わらず、
当たり前のように肉を食べている人間に置き換えると、
ぴったり当てはまるのではないか、と思いました。

東海林さんがベジタリアンになった、もしくはなろうとされているのか、
どのような意図で書かれたのかはわかりませんが、
これを読んで、
私たちの食事の為に殺されていく動物たちの悲惨な状況に
少しでも思いを馳せたり、
ベジタリアンという生き方があることに気づいたりされる方が
出てこられるといいな、と思います。

できるだけ早く、できるだけ多くの人に、
「うん、菜食もこれでなかなかおいしいものなんだね。」と言ってもらいたい。
そして、地球上に本当の平和が訪れてほしいです。




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